こんにちは!ライターのおかもとです。今回は三田市内で野良猫のTNR活動【T(トラップ=捕獲)・N(ニューター=不妊手術)・R(リターン=元の場所に戻す)】に取り組んでいる「さんだねこCLUB」をご紹介します。
コロナ禍でペットブームが広がる一方で、飼い主の勝手な都合で簡単にペットを手放す人も増えているそうです。代表の高畑 恵さんへのインタビューを通して、身近なところで起こっている野良猫に関する様々な問題をわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
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猫ボランティアの会「さんだねこCLUB」とは?
今回、お話を聞いたのは「さんだねこCLUB」代表の高畑 恵(たかはた めぐみ)さん。以前は「三田地域ねこの会」でベテランボランティアさんに教えてもらいながら個人で野良猫のTNRをコツコツやってきたそうですが、2020年1月1日からは「さんだねこCLUB」を立ち上げ、団体での活動をスタートされました。
── まず「さんだねこCLUB」はどんな団体ですか?
高畑 「さんだねこCLUB」は、猫が大好きな三田市内のメンバーが集まってできた、猫ボランティアの会です。寄付や署名をしてくれている賛同会員さんが50名弱で、そのうち実際に活動しているのは20代~70代の14~15名のメンバーになります。
「さんだねこCLUB」の主な活動内容
── 普段はどんな活動をされているのですか?
高畑 一番、力を入れているのは野良猫のTNR活動ですね。TNRとは、T(トラップ=捕獲)・N(ニューター=不妊手術)・R(リターン=元の場所に戻す)という意味で、野良猫が無制限に増えないように捕まえて不妊手術を施して放します。
他には、リリース不可能な猫の保護や療養、家猫修行、里親募集などの活動でしょうか。
基本的に猫の引き取りはしていませんが、病気やけがで元の場所に戻せない猫を保護したり「子猫を保護してほしい」という電話がかかってきた場合は放っておけないので、預かりスタッフが保護して世話をしています。
今現在も子猫だけでも20匹以上、大人猫を入れると30匹を越える猫を保護しています。ミルクボランティアスタッフが乳飲み子を預かって、離乳するまで世話をしていますよ。
保護したあとにやってくる現実問題
── 実際にどのような流れで猫が保護されるのですか?
高畑 まず、猫を保護した人から電話やホームページを通して連絡が来たり、市役所の方から連絡をいただくこともあります。特に4月~11月頃は忙しくて「庭に来た猫に餌をやっていたら、実は親猫で子どもを連れてやってきた」とか「餌もあげていないのに倉庫で子猫を産んでいた」といった事例が多いですね。
「どうして子猫を引き取ってくれないの?」と聞かれることが多いのですが、一匹引き取るだけでかなりの人手やお金もかかってくるんですね。
例えば、生まれたばかりの子猫で胎盤がついたままの子がいれば治療費が必要です。他にもノミ・ダニの処置や離乳するまでのミルク代や、結膜炎や下痢になったり、けがをしている子はレントゲンを撮ったり、とにかく様々な治療費がかかります。
子猫も人間の子どもと一緒で、夜中にミルクをあげないといけません。猫は一度に4~5匹、多い時で7匹ぐらいの子どもを産むので、その子たち全員にミルクをあげるのはとても大変なことなんです。
私たちも活動を続けていかないといけないのに、簡単に「引き取って」と言われると、スタッフの人手や活動資金がパンクしてしまいます。電話をくださった方には丁寧に説明しますが、まずは連絡される前にご自分で出来ることを探していただけると嬉しいです。
例えば、身の回り人に声をかけて里親探しをするとか、ミルクをあげるとか……。ボランティアにも限界があることを知っていただきたいですね。
野良猫のTNR活動をはじめるきっかけ
── そもそも高畑さんが野良猫のTNR活動を始めたきっかけは何ですか?
高畑 私はもともと犬を飼っていて自分のパートナーだと思えるぐらい大切にしていたんですが、その犬が亡くなった時にペットロスになってしまって……。そのあとまだ心の傷が癒えていなかった時に、不思議なことに小さい子猫が庭に現れたんです。
その時はまだ私が受け入れ体制ができていなかったので他の方に譲渡しましたが、それが初めて猫を保護して譲渡するというきっかけになりました。
野良猫は病気、けが、交通事故、喧嘩、飢え、人間からの虐待など、常に危険と隣り合わせの過酷な条件で暮らしています。私は猫保護活動を通して、野良猫の悲惨さを感じるようになりました。
野良猫の中には家から逃げ出した元飼い猫や、人間が飼えなくなって捨てられた子もいます。それは猫の問題ではなく人間の問題。その責任において飼う側はもう少しちゃんとしないと、猫たちが可哀想過ぎると思います。でも残念ながら現状は変わらないんです。
猫保護活動を支援する助成金制度がスタート
── 私も猫を飼っているので、野良猫がそんな現状で暮らしているなんて心が痛みます。
高畑 そうですよね。でも近年は動物愛護法が改正されて、テレビなどでも動物の遺棄や虐待は犯罪であることが言われるようになって、みなさんの意識の中での受け止め方が変わってきたようには感じます。
あと、三田市でもようやく先月(2021年5月)から「 飼い主のいない猫の不妊去勢手術費補助金制度」という助成金制度が始まりました。
<野良猫に関する問題>
- 野良猫が近所で増えて、庭を荒らしたり糞尿で困っている
- 喧嘩がうるさい
- 近所に餌やりさんがいて、餌場が不衛生で困る
- 庭に来る猫に餌をやっていたら出産し、子どもを連れてやってきた
- 子猫がゴミステーションに捨てられて鳴いている
など
高畑 このような問題を解消するためには、飼い主のいない猫の数を減らすことが一番。法律に基づいてできたこの制度を利用して手術をし、無制限に増えることを防いで少しずつ頭数を減らしていくことが大切です。
猫が好きな人にとっても、猫が嫌いな人にとっても、この補助金制度はとても有効であることをまずは知っていただきたいです。
猫も人も幸せに暮らしていくために大切なこと
── そんな補助金制度があったなんて、恥ずかしながら私も全く知りませんでした。
高畑 残念ながら、まだまだ認知度が低いのが現状ですね。野良猫問題って市内にいっぱいあると思いますが、この補助金制度を問題解決の糸口として利用して、飼い主のいない猫を一匹でも減らしていきたいと思っています。
オスは去勢手術をすることによって、縄張り意識やメスを巡っての喧嘩が激減します。その結果、交通事故に遭う可能性が減って喧嘩の声もうるさくなくなり、また尿の臭いも少なくなります。
あとメスは不妊手術をすれば妊娠することもなくなり、自分のために栄養を使えます。また生殖器の病気も防げるので、全体的に見れば手術によるメリットもたくさんあります。
手術をすれば一代限りの猫生になるので、長い目で見れば頭数は減っていきます。現状ではTNRが一番マシな方法なのです。
ちなみに、手術のために猫を捕獲すること自体は一般の方では難しいと思いますので、捕獲の方法などご相談ください。それは私たちの役目ですので。
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さいごに
今回、取材場所として使用させていただいた猫カフェ「猫結び」で私も2年前に保護猫に出会い、猫を飼い始めるきっかけになりました。
昨年からの新型コロナウィルスの影響によって自宅で過ごす時間が増え、世間でも猫を飼う人も増加しました。その反面「こんなに鳴き声がうるさいと思わなかった」「こんなに糞尿のにおいがキツいと思わなかった」「こんなに手がかかると思わなかった」などと言って、猫を手放す人もたくさんいるそうです。
「さんだねこCLUB」で保護され、病気の療養と人馴れトレーニングなどを経た子も「猫結び」にやってくるそうです。猫と暮らすことで大変なこともありますが、癒されることも学ぶこともたくさんあります。今回の取材を通して、動物を飼うことは動物の命を預かることだということを、改めて感じました。
猫を見つけてもむやみに餌をあげない、餌をやるならその責任において不妊手術を受けさせる、猫を保護して手術を受けさせる、保護された猫を自分の手で育てる、ホームページやお店がきっかけとなり猫を飼い始める……。猫を幸せにしてあげられる選択肢はたくさんあります。
この記事を通じて一人ひとりが、猫も人も幸せに生きていける方法を考えるきっかけになれば嬉しいです。
さんだねこCLUBの基本情報
- ホームページ: https://sanda-neko.com/
- SNS: Instagram
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