三田市でコロナ禍の自粛生活を送る夫婦のドタバタな日常を描き、2020年12月11日(金)から「OSシネマズ神戸ハーバーランド」にて公開が予定されてる映画「コケシ・セレナーデ」をご紹介します。
新型コロナウイルスの影響で実際にも自粛を余儀なくされた、2020年5月末からの約1ヶ月半という短い制作期間で生まれた今作。
実際に三田市で暮らす主演の「片山大輔」ともうひとりの主演「佐藤萌々花」さん、さらには映画監督の「松本大樹」さんにもお集まりいただき、撮影中の苦労話や映画の見どころなどをたっぷりと聞いてきましたよ!
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それは、突然の映画推薦から始まる……
「ちょ、なんなん、この子メッチャ声高いやんっ!」
彼のステージを初めて見た時の、私の第一印象はこうでした。その外見からは想像できなかったハイトーンボイスに面を食らった事をよく覚えています(笑)
で、その彼とは一体、誰かと言うと……
頭にこけしを乗っけてる彼こそがその人で、三田市在住の「片山大輔」(かたやまだいすけ)さん。以前は「BASSET HOUND」(バセットハウンド)というロックバンドで、ヴォーカル&ギターを担当していました。
ね、メッチャ声高いでしょ?(笑)
このミュージックビデオも当時にしてはなかなか斬新だった記憶がありますが、このBASSET HOUNDのライブを三田のどこかのお祭りのステージで見た時から「なんか面白い子が居るなぁ」と、その存在を覚えていたんです。
でも残念ながら、このBASSET HOUNDはすでに解散。片山さんは現在、音楽家としてジャンルに捉われず様々な音楽を制作し提供しているそうです。例えばVTuberに音楽を提供したり、「歌ってみた」系の動画で使用されるピッチを修正した音楽やカラオケ音源などなど。
そんな片山さんと先日、久しぶりにお会いする機会がありまして、その時に「今度ボク、映画に出る事になったのでぜひ観てください!」って言われたんですよね。
【映画】コケシ・セレナーデの概要
- 上映日:2020年12月11日(金)〜
- 上映場所: OSシネマズ神戸ハーバーランド
- 主演:片山大輔/佐藤萌々花
- 監督:松本大樹
- 公式ホームページ: https://kokeshiserenade.com/
- SNS: Twitter/ Instagram/ Facebook
ほとんど事前情報もないまま、彼に一方的に紹介されたのがこの「コケシ・セレナーデ」という映画です。えっ、こけしの映画ってどういう事!?ってか、出てるどころかガッツリ主演やんっ!(笑)
「まぁとにかく一度、観てくださいって!」
と、一般公開前にも関わらず、特別に本編を見せていただくことができました……あ、ありがうございます。みなさんには、こちらの予告編をどうぞ。
ネタバレ的なことは言いませんが、この映画はコロナ禍で日本全体が自粛中だった一番大変な時期に、スタッフもキャストも、そして撮影自体もできるだけミニマムな形で実施したそうです。その制作期間はわずか1ヶ月半
そしてなんと、映画に出てくるシーンは全て、三田市内にある片山さんの自宅のみで撮影されています。
映画「コケシ・セレナーデ」のあらすじはこう。
新型ウイルスが蔓延する中、兵庫県三田市に住む桜井夫婦は自宅で自粛生活を送っていた。仕事を完全に失ってしまい、落ち込む作曲家の夫。そんな夫をよそに、妻は外に出られないストレスを紛らわすため、夫のクレジットカードで一体の”こけし”を購入した。
映画「コケシ・セレナーデ」公式サイト より
それ以来妻は次々と新しいこけしを買い続け、家計は圧迫されるばかり。夫は大量のこけし達との共同生活にも辟易し始めていた。しかしある時、こけしによる不思議な出来事が訪れる。
買った覚えが無いのに、気が付けば増えている新たなこけし。置いた覚えのない場所で、ひっそりと佇むこけし。まるで何かを伝えているかのような奇妙なこけし達に導かれ、夫婦が向かった先は…。
こけしに振り回される夫婦のドタバタ劇が進むに連れて、ストーリーは意外な展開に。そして最後は「ええっ、そういう事なん!」といったサプライズもあって、思わぬ感動的なフィナーレを迎えます。
ストーリーやその伏線の作り込みもさる事ながら、コロナ禍で制限だらけだった状況でこれほどにも内容の濃い映画が作れるんだなぁと、素直に感動させていただきました。
それと個人的な感想としては、もうひとりの主人公の「桜井萌々花」役を演じている「佐藤萌々花」(さとうももか)さんがマジ最高。基本的にはハチャメチャで破天荒な奥さん役なんですが、なぜか不思議と憎めない。いやそれどころか、たまらなく魅力的なんです。
ちなみにこの萌々花さん、片山さんとは音大時代の同級生で普段は俳優やモデルとしてご活躍されています。NHK朝ドラの「べっぴんさん」にも縫い子役で出演されていたそうですよ。
最初は片山さんに勧められるまま、軽い気持ちで鑑賞させてもらった「コケシ・セレナーデ」ですが、見終わる頃にはどっぷりコケシワールドに引き込まれている自分がいました。
これはもっといろいろお話を聞いてみたい!と思い立って今回、主演のおふたりと監督の松本大樹(まつもとだいき)さんにも映画のロケ地でもある片山さんのご自宅にお集まりいただき、映画「コケシ・セレナーデ」に関するあれこれをたっぷりインタビューさせていただきました。
コロナで当初の撮影がNG。主演の母が集めるこけしでストーリーを作った
——片山さんと萌々花さんのおふたりがこの「コケシ・セレナーデ」という映画の主演をする事になった経緯を教えていただけますか?
松本監督:はい、話せばちょっと長くなりますが(笑)
まず片山さんと知り合ったのは、彼がバセットハウンドをやってた時にゾンビのミュージックビデオの制作を依頼してくれたのがきっかけです。その後に、私の初監督作品になった「 みぽりん」という映画を撮ってる時にまた連絡をくれて、映画の主題歌を作ってくれたんですよね。頼んでもいないのに(笑)
——頼んでもないのに主題歌を……(笑) ってか、あのミュージックビデオを手掛けたのは松本監督だったんですね!
そうなんです。それで上映する度に映画館でライブをしてもらったりとか、お客さんと一緒になって騒ぎながら観る「絶叫上映」というイベントに来てもらったりしてたんです。
松本監督:で、次回は実際に片山さんに出てもらって映画を作りたいよね、という話をしていて。
実は外で撮影する映画の制作を考えていたんですが、コロナの影響でそれができなくなってしまった。じゃあこの片山さんの家の中だけで、片山さんのお母さんが常日頃からコレクションされているこけしを使って撮影しよう!と思いついたんです。
——なるほど、そういう経緯があってこけしを題材にした映画が生まれたんですね!
そうなんです。それで自宅で撮影するのなら「片山さんが旦那さん役で、奥さんと2人の夫婦の話にしようか」ということになって、片山さんに「誰か奥さん役をやってくれそうな子いない?」って聞いたら、音大時代の同級生で歌の歌える萌々花ちゃんを紹介してもらって、それでこのふたりに主演をしてもらうことになった、というのが経緯ですね。
——萌々花さん、こけしが題材の映画と聞いて最初、どう思いましたか?(笑)
萌々花:実は最初、映画の内容についてあまりちゃんと説明してもらってなかったんですよ。
片山くんから急に電話が来て「夫婦役らしいから」みたいに言われて「ああ、そうなんやぁ」ってなって、「あとオーディションみたいなのがあるらしいから」って言われて「ああ、そうなんやぁ」ってなって(笑)
「え!オーディション!?大丈夫かなぁ」って不安に思ってたんですけど、最初にリモートで顔合わせをした時からすでに台本があって、オーディションどころかいきなり稽古から始まりました。
で、その時になって初めて「こけしの話やから」って言われたので、こけしについてあまり考える暇がなかったんです。でも作品自体がすごく良い話だったので「早く演じてみたい!」という気持ちしかなかったですね。
——片山さんは今回の「コケシ・セレナーデ」が役者としての演技初挑戦だったんですよね。実際に映画を一本、演じてみてどうでしたか?
片山:やー難しかったですよね、やっぱり。
松本監督:でも最近、結構いろんな作品に出てるやん(笑)
片山:そうですね、今度はVシネにもちょっと出る予定があったりします。
松本監督:何本出るねんっ!ていうぐらい、最近は学生映画から商業映画まで出まくってるんですよ、彼。
片山:今回、霊媒師役で出られてた海道力也さんからの繋がりで「今度こんな役あんねんけど出てくれへん?」って、よく声を掛けていただくんです。なので自分としても「何事も経験やな」と思って、前向きにやらせてもらってます。
難しいですけどね、すごく楽しいんですよ。
適度な距離感で、あえて演技をしないように
——おふたりにお聞きしたいのですが、今回の「コケシ・セレナーデ」という作品を演じる上で心掛けた事ってありますか?
片山:僕は、あんまり演技せんとこうって思いましたね。嘘臭くなってしまうので。
あと、相手の萌々ちゃんが同級生で親友っていう、もうすでに関係性が出来上がってる事もあったので、なるべく素の状態で演技しようと思いました。
——友達で夫婦役ってなると、もしかしてやりづらかったりするのかな?って思ったんですけど、そのあたりはどうでしたか?
片山:全くやりづらくなかったですよ!むしろやりやすかったです。
——そっかぁ、じゃあ普段の友達のノリをそのまま演技に持っていったような感覚なんですかね?
片山:そうですね。でも最初それをやり過ぎてしまって、監督から「ちょっとそのノリは結婚してる夫婦というより、同棲したての恋人同士に近いです」って一番最初に言われちゃったんです。なのでそれからは、ちょっと抑えたりはしました。
松本監督:あぁ、最初は付き合いたてのカップルか、それこそ友達みたいな感じになっちゃってましたね。なのでもうちょっとなんか「落ち着いた夫婦感」みたいなのを出してくれという風にオーダーしました。
萌々花:私は頑張って演じようと思いすぎちゃって、逆にテンションが上がっちゃってたというか。であればもう普段の感じで、適当ではないですけど適度な距離感がいいんじゃないかな?と思って、そこからは演技させていただきました。
撮影と同時進行のオリジナル曲制作には一番苦労した
——ほかに、今回の撮影で苦労した事って何かありますか?
松本監督:やっぱ、音楽じゃない?(笑)
片山:やったことのない演技に加えての楽曲制作でしたからね……。
——そうそう今回、片山さんが制作されたオリジナル曲が4曲使われていましたが、音楽に関しては監督からどんな感じでオーダーされてたんですか?
松本監督:やー、実はもう結構な丸投げでした。
片山:制作期間が1ヶ月半と短かったのと、しかも萌々ちゃんに歌ってもらうために歌詞も考えないといけなかったので、とにかくメチャメチャ大変でした。
松本監督:もうそろそろスケジュールがヤバイですよ、ってケツを叩きまくってたよね。
——えっ、音楽制作は撮影よりも前のタイミングじゃないんですか?
松本監督:いえいえ、撮影と同時進行だったんです(笑) だから撮影してた時にまだ曲が出来てない、なんて事もありましたよ。
片山:いつ監督に「曲どうなってますか?」って聞かれるのがもう怖くて怖くて、ヒヤヒヤしながら撮影してましたね。セリフも覚えなあかんし、楽曲も作らなあかんし、おまけになぜかその時期に特大のスランプが来てたので何度も作り直したりして。
で、やっとの思いで一曲作って、LINEで監督に音源を送ったらソッコーで電話がかかってきて「片山さん、コレちょっと違いますね」ってアッサリ言われちゃって……あの時は真剣に凹みましたね(笑)
松本監督:結局、ボツになった曲が2曲あるんですけど、それは映画のパンフレットにQRコードを載せて、そこから聞いてもらえるような仕掛けを考えてたりします。
片山:僕も先日、久しぶりにボツ曲を聞いてみたんですけど、我ながらまぁヒドい!バランスぐちゃぐちゃやし、適当に作ってんのこれ?っていうぐらいにヒドかったです。
松本監督:今になって聴くと逆に楽しめましたけどね。でもやっぱり今の曲の方がいいなぁ。なのでそのボツ曲のダメダメな具合も楽しんでいただけたらって思います。
——萌々花さんは、撮影でご苦労はなかったですか?
萌々花:ありましたよ!私が最初にキャスティングされた時に「歌が歌える子」っていう触れ込みだったんですが、とにかく歌うことが本当に久しぶりでした。音大時代にミュージカル科で2年間勉強してたんですけど、卒業してからはそんなに歌う機会が本当になかったので……。
しかも、今回のオリジナル曲ってそれぞれ全く違うテイストの曲調だったので、全部ミュージカル調に歌うわけにもいかないし、どういう風に歌ったらいいんやろう?っていう不安というか、プレッシャーがすごくありました。
片山:今回の曲はすべて僕の部屋で録音したんですが、「もっとLISAっぽく歌って!」とか、いろいろオーダーしましたよ。あとは監督が、演歌に関して特別な思い入れがあるのか「もっとこぶしを入れて!」とか、メチャクチャこだわって指示してましたね。
松本監督:演歌が一番好きだったんですよ(笑)
片山:あ、それと、オリジナルの4曲をすべて違うジャンルで作らないといけなかったのもキツかったなぁ。
松本監督:しかもその4曲だけじゃなくて、エンドロールに使った曲でも片山さんにサックスを吹いてもらったんですよ。収録の3日前くらいにお願いして。
——あ!確かにエンドロールに「サックス 片山大輔」って出てましたね。片山さんってサックスまで吹くんや!ってビックリしましたもん。
松本監督:あとエンドロールの曲は、片山さんのお母さんにピアノを弾いてもらったんです。
——あ、もしかしてエンドロールに「こけしちゃん」って書いてあるのは、お母さんの事だったんですか?
松本監督:はい、そうなんです。片山親子の演奏を録音してもらいながら、僕らは横でお昼ご飯を食べて優雅に聞かせてもらってました。
いろんな人を勇気づけ、前向きな気持ちになってもらえる作品に
——最後に、おふたりから「コケシ・セレナーデ」の見どころと、さんだびよりの読者へメッセージをお願いします!
片山:見どころはやっぱり音楽かなぁと思いますね。随所に散りばめられているクラシックの音楽だったり、4曲あるオリジナル曲も一見ふざけてるのかと思いきや、ちゃんとそれには理由があるという伏線を張ってるところも面白いと思います。
コロナ禍で本当に大変な時期での撮影だったんですけど、ちょっとだけ落ち着いてきた今の時期に見返した時に、「ああ、こんなこともあったな。あの時はしんどかったのに、こんなに頑張って映画を作った人がいるんだ」と、世のクリエイターをはじめいろんな方を勇気づけられる作品になればな、と思ってます。
自分としてもこの作品に関しては「頑張った」と、自信を持って言えるので。
萌々花:ペットのワンちゃんたちも一発撮りOKで本当に頑張ってくれたし、こけしもたくさん使われているし、私たちだけじゃなくて他の出演者の方々もすごい名演技ですし……あり過ぎて困るぐらいに見どころはいっぱいあります。
近頃はコロナの影響で暗いニュースばっかりで、私もこの撮影が始まる前はすごく気分が暗くなっていました。きっとそれは皆さんも一緒だったと思うんですけど、私にとってこの映画は「あ、一人じゃないんだな」って改めて気付かせてくれた作品になりました。
この映画を見てくださった皆さんにも「自分は一人じゃない」って感じて欲しいし、「あ、頑張ろう」って思ってもらえる内容だと思うので、この映画を見て少しでも前向きな気持ちになってくれたらなって思います。
——最後に、監督からも一言メッセージをお願いします。
松本監督:僕だけじゃなく皆さんが、コロナでいろんなものを失ったと思うんですよ。だからこそ「コロナがあったからこそ生まれた」っていう作品をひとつ作りたかったんです。自分のわがままかも知れないですけど、コロナに全部やられてしまうんじゃなくて、ひとつ反抗してやったぞ!みたいな。
あと、映画の製作費に「持続化給付金」を使ったんです。そういうお金がなければこの作品も撮れてなかった訳ですし、本当に大変な時期でしたけど皆さんに協力してもらって、今だからこそという作品を生み出せて本当に良かったな、と思ってます。
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さいごに
映画「コケシ・セレナーデ」は、2020年12月11日(金)から、神戸ハーバーランドumieのサウスモール5Fにある「OSシネマズ神戸ハーバーランド」にて上映が予定されています。
コロナ禍における夫婦の日常を切り取った心温まる感動作で、年齢や性別を問わず楽しめると思いますよ。あとラストシーンは、片山さんのあの「ハイトーンボイス」が発揮された内容になっています(笑)
興味を持った方はぜひ、映画館で観ていただければと思います。
あとこのインタビュー記事は映画を観る前はもちろん、観終わったあとにもぜひもう一度、映画の内容を思い出しながら読み返してみてください。さらに何倍にも、コケシワールドを深く楽しめると思いますので。